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テクノロジー · シリーズ「Inside Binotec」1/20

角質層の下へ、腸の吸収バリアの先へ

製薬研究所のドラッグデリバリー技術は、いかにして化粧品・食品原料になったのか — 米国特許3件から読み解くBinotecのナノデリバリー・プラットフォーム

韓国・大邱 — FOB Holdings 海外ニュース取材班 | 2026年9月22日 | 7言語同時掲載

Binotecの経皮デリバリー技術を応用したスキンケア製品群。同じHydroethosome®プラットフォーム上で、成分に応じて粒子径を40〜250ナノメートルの範囲で設計している。(写真:Binotec)
Binotecの経皮デリバリー技術を応用したスキンケア製品群。同じHydroethosome®プラットフォーム上で、成分に応じて粒子径を40〜250ナノメートルの範囲で設計している。(写真:Binotec)

「特許取得のナノデリバリー技術」という文言は、化粧品原料カタログではすでにありふれたものになった。だからこそバイヤーの質問はより具体的になっている。どの特許なのか。粒子はどれほど小さく、どれだけ成分を内包できるのか。そして、それはヒトの皮膚や血液で実際に測定されたのか。

今年7月、慶尚北道慶山市にGMP工場を竣工したナノデリバリー技術企業、Binotec(代表:金有美)は、この3つの問いに書類で答えられる数少ない企業の一つだ。取材班は同社の英文技術カタログ、米国・欧州の特許登録資料、国際学術誌に掲載されたヒト臨床論文、完成品の試験成績書を検証し、Binotecのデリバリー技術の実像を整理した。

製薬研究所から生まれた技術

Binotecの技術は、製薬分野のドラッグデリバリーシステム(DDS)に端を発する。有効成分が目的の部位に届く前に分解・排出されないよう、担体に包んで運ぶ技術だ。金有美代表は米ジョージア工科大学、慶北大学校歯学部での博士研究員を経て、CJ第一製糖の製薬研究所で首席研究員として担体を開発してきた。この分野での研究歴は25年に及ぶ。2014年にCelize Cosmeticとして創業し、2018年にBinotecへ社名を変更した同社は、この原理を化粧品の有効成分と食品原料に応用する道を選んだ。

同社が掲げる課題意識はシンプルだ。皮膚には外部物質を防ぐ角質層があり、腸には水に溶けにくい成分を通しにくい吸収バリアがある。配合率をどれだけ高めても、目的の層に実際に届く量はそれをはるかに下回ることが多い。Binotecはこの2つのバリアに、それぞれ異なる担体で取り組んでいる。

「デリバリー技術の価値は、成分をどれだけ多く入れられるかではなく、どれだけ正確に届けられるかにある。」— 金有美 Binotec代表

経皮デリバリー — Hydroethosome®と5つの派生担体

Hydroethosome®は、有効成分をハイドロゲルとともにナノサイズの脂質小胞(エトソーム)に封入し、皮膚の内側へ届ける経皮デリバリー・プラットフォームだ。2017年の韓国特許(10-1810160)に続き、2022年9月に米国特許(US 11,452,679 B2)を取得。PCT国際出願を経てタイとドイツにも出願している。同社は、ハイドロゲルが成分の安定性と封入率を同時に高める点をこのプラットフォームの核心と説明する。

Hydroethosome®の構造模式図と、韓国・米国・タイ・ドイツ・PCTの特許書類。韓国(2017年)と米国(2022年)は登録済み、タイ・ドイツは出願中。(資料:Binotec 6G REPOVE技術カタログ)
Hydroethosome®の構造模式図と、韓国・米国・タイ・ドイツ・PCTの特許書類。韓国(2017年)と米国(2022年)は登録済み、タイ・ドイツは出願中。(資料:Binotec 6G REPOVE技術カタログ)

このプラットフォーム上で、封入する成分ごとに複数の派生担体が開発されている。2024年版の英文技術カタログに掲載された仕様は次のとおりだ。

担体封入成分粒子径・封入率根拠・特許
HydroDNA™サーモン由来PDRN(Sodium DNA)約40nm・封入率90%以上KR 10-2678046・フランツセル皮膚吸収試験
Hyalutosome™低分子ヒアルロン酸約40nmKR出願 10-2021-0191800・フランツセル試験
Triaction peptosome®ペプチド3種約160nmHydroethosome®プラットフォーム
Multisome® Licorice甘草エキス(グリチルリチン酸)約120nm複数成分の同時封入
Hydropartisome®銅トリペプチドなど頭皮用成分200〜250nmの固体脂質ナノ粒子、毛包経路・徐放型KR 10-2037354・10-2190935・US 11,826,474 B2

バイヤーが注目すべき点は2つある。第一に、負電荷のため脂質小胞に安定して保持しにくいとされるDNA成分(PDRN)を、約40ナノメートルのサイズで90%以上封入している点。第二に、同じプラットフォーム上で、成分が届くべき場所に応じて40ナノメートル(ヒアルロン酸)から250ナノメートル(毛包向け固体脂質粒子)まで粒子径を作り分けている点だ。

HydroDNA™のフランツセル皮膚吸収試験の蛍光画像。塗布前、5分後、20分後、1時間後の順に、担体が皮膚の内側へ移動する様子が観察される。社内試験データ。(資料:Binotec)
HydroDNA™のフランツセル皮膚吸収試験の蛍光画像。塗布前、5分後、20分後、1時間後の順に、担体が皮膚の内側へ移動する様子が観察される。社内試験データ。(資料:Binotec)

皮膚への浸透は社内のフランツセル試験で確認され、完成品レベルでは外部機関による試験も行われた。REPOVE Solution Bでは、韓国皮膚科学研究院の試験で塗布30分後に皮膚吸収率150%、吸収速度223%、吸収深度223%の増加が測定された。

第6世代担体の放出パターン図。粒子の大きさと構造によって、表皮・真皮・毛包など異なる深さで成分が放出されるよう設計されていると同社は説明する。(資料:Binotec 6G REPOVE技術カタログ)
第6世代担体の放出パターン図。粒子の大きさと構造によって、表皮・真皮・毛包など異なる深さで成分が放出されるよう設計されていると同社は説明する。(資料:Binotec 6G REPOVE技術カタログ)

経口デリバリー — Absosome™と、ヒトで測定された数値

口から摂取する成分のための担体、Absosome™は、ナノ脂質粒子にキトサンやポリグルタミン酸などを多層にコーティングし、胃酸や消化の過程から成分を守りつつ腸での吸収を助けるよう設計されている。この多層コーティング・ナノ粒子技術は、2025年に米国特許(US 12,318,462 B2)と欧州特許(EP 3995126)を取得し、欧州特許はドイツ・英国・フランスで有効化されている。

経口デリバリー技術の検証は動物実験にとどまることが多い。Binotecは、ヒトを対象とした薬物動態(PK)試験の結果を査読付き国際学術誌に発表した。全北大学校病院の有効性評価センターで健康な成人男性20人を2群に分けて行った試験では、Absosome™で封入したクルクミン原料HYDROCUMIN™ 400mgを摂取した群は、一般的なクルクミン2,000mgを摂取した群に比べ、最高血中濃度(Cmax)が38.30から445.15へ、血中曝露量(AUC)が561から2,477へと高く測定された。摂取量が5分の1でもAUCは4.4倍高く、同用量に換算すると約23倍に相当する。結果は2026年にScientific Reportsに掲載された。先行する動物試験ではAUCで109倍の差が報告されているが、これは前臨床の結果である。

Absosome™経口デリバリー技術を応用したBinotecの食品原料製品群。同社は、ヒト薬物動態試験で確認された吸収指標と健康効果を明確に区別して説明している。(写真:Binotec)
Absosome™経口デリバリー技術を応用したBinotecの食品原料製品群。同社は、ヒト薬物動態試験で確認された吸収指標と健康効果を明確に区別して説明している。(写真:Binotec)

同社は、これらの数値はあくまで吸収指標であり、特定の健康効果を意味するものではないと明言している。海外バイヤーが原料規格書とあわせて確認できるのは、試験機関、被験者数、投与量、測定指標が公開されたヒトのデータだという点だ。

特許から読み解く保護範囲

地域番号内容状況
米国US 11,452,679 B2Hydroethosome®経皮担体2022年9月27日登録
米国US 11,826,474 B2ナノ脂質担体(Hydropartisome®系)登録
米国US 12,318,462 B2多層コーティング・ナノ粒子(Absosome™系)2025年登録
欧州EP 3995126多層コーティング・ナノ粒子登録・DE/GB/FR有効化
韓国18件担体・発酵・抽出技術登録
国際PCT/KR2018/002808・TH 1901001249・DE 11 2018 003 377.5Hydroethosome®国際出願出願中

ナノ担体自体は、1960年代にリポソームが報告されて以来、数十年にわたり発展してきた分野であり、新しい概念ではない。Binotecが掲げる差別化要素は、担体・発酵・抽出を1社の中で組み合わせ、原料開発から完成品生産までをつなぐ体制と、その過程を特許と論文として残してきた点にある。関連論文は、2019年にJournal of Drug Delivery Science and Technologyに掲載されたエトソーム経皮デリバリー研究から2026年のヒト臨床論文まで10本にのぼる。

海外パートナーに開かれた3つの道

今年7月に竣工した慶尚北道慶山市のBinotec GMP工場。完成品のバッチごとに、性状・pH・粘度・微生物限度・有効成分含量を試験した成績書を発行する。(写真:Binotec)
今年7月に竣工した慶尚北道慶山市のBinotec GMP工場。完成品のバッチごとに、性状・pH・粘度・微生物限度・有効成分含量を試験した成績書を発行する。(写真:Binotec)

Binotecは現在、化粧品原料19種と食品原料5種を保有しており、上記の担体はまず自社スキンケアブランドREPOVEとインナービューティーブランドABSOVEに適用された。海外ブランドとの協業は3つの形で可能だ。担体に封入した原料の供給、パートナーが保有する成分をBinotecの担体に封入する共同開発、そして慶山GMP工場でのOEM・ODM生産である。同工場はEU CPNP登録製品とMUIハラール認証製品の生産実績を持つ。

金有美代表は「特許と論文で検証できる技術を基盤に、海外ブランドとの原料供給、共同開発、製造協力を広げていく」と語った。

本連載はBinotecの技術と製品を一つずつ紹介し、7言語で掲載する。次回はHydroethosome®プラットフォームの第6世代への進化と、HydroDNA™の開発過程を取り上げる。

Binotecについて

Binotec Co., Ltd.は、ナノデリバリー技術を化粧品・食品原料に応用する大邱拠点のバイオ企業。経皮担体Hydroethosome®、経口担体Absosome™、発酵プラットフォームAbsobiome™、高濃度抽出技術Absotraction™を保有し、韓国特許18件、米国特許3件、欧州特許1件を登録している。韓国科学技術情報通信部の「革新企業国家代表1000」に選定され、2024年にはベンチャー創業振興功労で中小ベンチャー企業部長官賞を受賞。2026年7月に慶尚北道慶山市でGMP工場を竣工し、APEC 2025の公式スポンサーを務め、CES 2026とコスモプロフ・ボローニャ2026に出展した。

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